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会員紹介

蓼科でイタリアンレストラン「ca’enne」を開業。

食を通じてこの土地の魅力を発信したい

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Q:なぜイタリアンの道に進もうと思ったのですか?

もともと料理が好きだったのと、自分がサラリーマンをするイメージが全然湧かなかったので、大学卒業後は最初は和食チェーン店に料理人として就職しました。でも、効率性が求められる厨房で、簡素化された料理を作る毎日に、日々、悶々としていた。

そんなある日、休日にたまたま入ったイタリアンのお店で、客席と近い距離でシェフが暖炉で肉を焼き、その場でお客さんに料理を提供する光景を見た時、今の自分の料理にはない”温もり”のようなものを感じ、とても心を動かされました。何気ない出来事でしたが、これが私が今の道に進むきっかけとなった原体験です。

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Q:本場イタリアで修行をしようと思ったきっかけは何ですか?

和食からイタリアンへ転身した私は、オーナーや同僚がイタリア人のレストランで働くことになります。そして、そこで見たイタリア人の食文化に強く興味を惹かれるようになります。

日本人のシェフたちが賄いでカツ丼などを料理する中、イタリア人はフォカッチャにチーズと生ハムを乗せるだけ。なぜ肉を揚げてわざわざ卵でとじる必要があるのか。食材の味をそのまま楽しむシンプルさに、とても魅力を感じました。

そこからイタリアの食文化にどんどん魅了され、気付いたら渡欧を決意していました。

Q:イタリア修行ではどんな収穫がありましたか?

イタリアで最初に門を叩いたのは、エミリアロマーニャ州にある1つ星レストラン「Ristorante Paolo Teverini」。

 

初めは言葉が分からず戸惑いの連続でしたが、日本での経験が活き、4ヶ月が経った頃にはパスタ部門の責任者としてメニュー開発も任せてもらえるようになりました。

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▲ 同僚との写真

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▲ 看板シェフとしてメニューの表紙に名前がクレジットされました

日本の料理は包丁さばき一つとっても、世界的に見てとても技術力が高いです。それに比べると、イタリア人は大雑把で仕事が雑なことが多いのですが、それでも食べてみるととても美味しい。綺麗に作り過ぎない方がしみじみ美味しかったりする。料理は技術だけではない。料理の奥深さを学んだ貴重な経験でした。

Q:日本とイタリアの食文化の違いは何ですか?

イタリアでは「イタリア料理というものは存在しない」と言われるほど、その地方の風土、食材、文化などの個性を大事にする精神があります。日本のシェフはお店に閉じこもってお客さんを待つ人が多いですが、イタリアのシェフはお店の中に閉じこもっておらず、積極的に外に出て収穫祭などで料理を振る舞っていて、私もよくイベントに出店して地域の人たちと交流を深めていました。

そして、そんな時によく振る舞っていたのが、私の原体験でもある「薪」料理。通常のガスコンロや炭火とは異なり、薪はそれ自身が持つ水分が燃焼とともに蒸発し、強い直火で表面はクリスピーになっても、中は蒸されてふっくらと焼き上がります。

日本ではあまり目にすることのない薪料理ですが、イタリアのお店では目にする機会が多く、私が本格的に「薪」料理の勉強を始めたのもこの頃からでした。

Q:イタリアンレストランからなぜ生ハム工房に転職したのですか?

昔から野菜など自分で作れるものは自作したいという意識があったことから、せっかくなら生産技術も学びたいと思い、ヨーロッパの3つ星レストランやイギリス王室にも卸す、パルマ地方にある生ハム工房「Antica Corte Pallavicina」に住み込みで働き始めました。

ここは「クラテッロ」という絶滅しかけた品種の生ハムを生産しており、ここにしかない特殊な方法で生ハムを作る技術を学びました。近郊の工房は空調管理がされた設備で年間9万本の生ハムを生産しますが、この工房は全て手作業で作るので、生産数はせいぜい年間5000本。熟成も通常3ヶ月のところをここは1年かけて熟成させます。

それでもこの工房を選んだのは、手間暇かけて作った生ハムの方が香りが高く、深い味わいが出るから。その土地に根ざした、その土地にしかない手作りの技術を学びたかったのです。

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▲ 肉を牛の膀胱に詰めて縛り熟成させる

Q:帰国から独立までの経緯を教えてください。

2012年に帰国してからは、六本木、南青山でイタリアンレストランのシェフを務めますが、イタリアで学んできたことを活かす場は地方にあるとの想いから、帰国して5年後に長野県の蓼科へ移住。そこで「L’essenza」というイタリアンのシェフを2年務めます。そんな中で、たまたま森のオフィスと関わるようになり、料理関係者だけに限らない多種多様な方達と出会い、様々な刺激を受ける中で、自分のやりたいことがどんどん明確になってきました。

私はこの八ヶ岳という、広大な自然、新鮮な食材、そして刺激的な人々が暮らす土地が大好きです。

ここで育った新鮮な野菜、山菜、天然のキノコなどを活かし、地域の方々と一緒になって、この土地の魅力を発信していきたい。

 

そして何より、私の原体験であり、イタリアで技術を磨いた薪料理を多くの方に体験していただきたい。

 

そんな思いが強くなり、今年の4月に独立という形でお店を新しくリニューアルすることとなりました。

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Q:新しいお店「ca’enne」の名前にはどんな想いが込められていますか?

「ca’enne(カ エンネ)」はイタリア語で、「Casa」は家、「Enne」はアルファベットのN(私の名前ノリユキの頭文字)を意味します。

この土地でしか食べられない薪を使ったイタリア料理を、私の自宅にお招きして提供したい。いつでも気軽に遊びに来てください。そんな想いを込めて名づけました。

 

地元の方も遠方の方も、ぜひこの八ヶ岳という素晴らしい土地で、新鮮な食材を使った薪料理を楽しんでもらいたいです。

お待ちしています。

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​名前

臼井シェフ

職種

シェフ(イタリアン)

移住歴

神奈川県(横浜市)→イタリア→長野県(蓼科)

プロフィール

本場イタリアの星付きレストランや生ハム工房で料理の修行を積み、帰国後は東京の六本木、南青山でレストランのシェフを務めるが、自然豊かな環境で新鮮な食材を使った料理がしたいという想いから、2017年に長野県へ移住。蓼科という土地でイタリアンレストラン「L’essenza」のシェフを2年間務める。そんな中、森のオフィスとの出会いをきっかけに地域の様々な人と繋がるようになり、もっと地域に開かれたお店を作りたいという想いが強くなったことから、2020年に独立を決意。薪料理専門のイタリアンレストラン「ca’enne」を開業し、地域の人と協業しながら様々な取り組みを実践している。

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